向日葵畑で君と

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 朝、散歩に出掛けてみようと思ったのは、全くの思い付きだった。  夏休みに入って一週間ほど、月が替わった日のその朝に、妙にすっきりと目が覚めてしまった。まだ随分早い時間だったので二度寝をしようかとも思ったのだが、眠気は訪れず、ただ寝転がっていた。その時にふと思ったのだ。  カーテン越しに空が明るくなっているのはわかったので、僕は簡単に身支度をして外に出た。  既に太陽が辺りを明るく照らしていたが、日中よりは余程涼しい。道端は落ちた朝露にうっすらと濡れていた。  いつもと同じ道を歩いていても面白くないので、僕は通学路とは逆側の道へ進んだ。  普段よりも、空気が澄んでいるような気がした。こんな時間にあまり外に出たことはないから、朝陽の光の具合なのかもしれない。  日光がジリジリと暑さを伝えてくるが、吹く風は少しひんやりとしていて肌に心地良い。  気持ちの良い朝だった。  十分ほど歩いたころ、とある角を曲がった僕は、少し離れた場所に一面の黄色を見付けた。  特にどこを目指していたわけでもない僕の足は、自然とその黄色に向かった。  それは向日葵畑だった。  こんなに近くに、こんなに大きな向日葵畑があったなんて、今まで気が付かなかった。  少し見渡すと、向日葵畑の中には散歩道が用意されていた。僕はそこに入ってみることにした。
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