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ひまりは、僕が向日葵畑に着くころには、いつも散歩道の入口で待っていた。
合流できたら、僕らは並んでしばらく歩き、あの円形の空間へ向かう。
そこでしばらくの間座り込んで話をし、少しするとひまりが時間だと言って立ち上がり、別れる。
それが、いつもの流れだった。
話の内容は様々だった。
幼い頃一緒に遊んだ公園で、ひまりがブランコから落ちて大泣きしたこと。
通っていた幼稚園が、今はもう閉園になって更地になってしまったこと。
小学生の時、石を蹴りながら帰った日々の出来事。
思い出話は尽きなかった。毎日、そういう懐かしい思い出の欠片を掘り起こして共有して、それから、またねと言って別れる。翌日が晴れたら、その「また」はすぐにやってくる。
僕らは雨の日以外のほとんど毎日、向日葵畑で少しの時間を一緒に過ごした。その間に毎日少しずつ、ぽっかりと空いていた空間には向日葵が増えていった。
何でもない会話をするその時間が、その場所が、とても大切だった。
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