向日葵畑で君と

6/11
前へ
/11ページ
次へ
 その翌日、八月三十一日。  僕とひまりはおはよう、と言ったきり無言のまま、いつもの円形の空間まで歩いて行った。  いつもなら隣に並んで座ってから話を始めるのだが、今日は違った。  ひまりは人一人分の空間を開けて、僕の正面に立った。  少しずつ増えた向日葵が、僕らのすぐ近くまで迫っていた。  「ねえ、ナオ君」  ひまりは言った。  「今日まで、私に付き合ってくれてありがとう。毎日、会いに来てくれて嬉しかったよ」  ひまりの言葉に、僕は何を返すこともできなかった。  「ナオ君、わかってたでしょう? 最初から、何もかも」 「ひまり、僕は……」 「それでも私に会いに来てくれたナオ君は、私の知ってた通り、すごく優しい」  ひまりは表情に陰りを落とした。  「私ね、ずっと後悔してた。あの日待ち合わせに行けなかったこと。それで、ナオ君にすごく辛い思いをさせてしまったこと。……そうしたら、神様が一夏分、チャンスをくださったの。結局、何でもない毎日を一緒に過ごすことに使っちゃったけど……私、それは後悔してない。だって、そんな普通のことをして、ナオ君と過ごしたかったから」  そして、ひまりは何かを決心した顔で、僕を見た。     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加