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その翌日、八月三十一日。
僕とひまりはおはよう、と言ったきり無言のまま、いつもの円形の空間まで歩いて行った。
いつもなら隣に並んで座ってから話を始めるのだが、今日は違った。
ひまりは人一人分の空間を開けて、僕の正面に立った。
少しずつ増えた向日葵が、僕らのすぐ近くまで迫っていた。
「ねえ、ナオ君」
ひまりは言った。
「今日まで、私に付き合ってくれてありがとう。毎日、会いに来てくれて嬉しかったよ」
ひまりの言葉に、僕は何を返すこともできなかった。
「ナオ君、わかってたでしょう? 最初から、何もかも」
「ひまり、僕は……」
「それでも私に会いに来てくれたナオ君は、私の知ってた通り、すごく優しい」
ひまりは表情に陰りを落とした。
「私ね、ずっと後悔してた。あの日待ち合わせに行けなかったこと。それで、ナオ君にすごく辛い思いをさせてしまったこと。……そうしたら、神様が一夏分、チャンスをくださったの。結局、何でもない毎日を一緒に過ごすことに使っちゃったけど……私、それは後悔してない。だって、そんな普通のことをして、ナオ君と過ごしたかったから」
そして、ひまりは何かを決心した顔で、僕を見た。
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