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「ナオ君。あの日、あの花火大会の日、待ち合わせに行けなくて……」
「……良いんだ」
僕はひまりの言葉を遮って言った。
「謝らないで。もう良いんだよ、ひまり。こうしてまた会いに来てくれた、それだけで、もう十分なんだ」
「でも……」
「本当に、良いんだ」
今度は、僕が話す番だった。
「ひまり。僕は最初にこの向日葵畑を一人で歩いて、この場所に辿り着いた時、君のことを思い出して泣きそうになった。そしたら、目の前に君が現れたんだ。夢でも何でもよかった。もう一度君に会えるなら。でも、君は紛れもなく、僕の現実に現れてくれた」
あの日、この空間に辿り着いた時、僕はどうしようもなく泣きたかった。
四方を向日葵で囲まれたこの場所は、ぽっかりと穴が空いたままの僕の心そのものだった。
そして、それを唯一、埋められるのがひまりだった。
僕は精一杯微笑んだ。
「ありがとう、ひまり。僕に会いに来てくれて。やっぱりあの日僕がここに来たのは、偶然じゃなくて必然だった。……僕は、もう大丈夫だよ。ひまりが僕の欠けた心を、埋めてくれたから。……ひまりはどうだい?」
僕が聞くと、ひまりの瞳から一滴、ポトリと涙が伝い落ちた。
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