向日葵畑で君と

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 ひまりは笑っていた。優しく細めたその目尻から、溢れた心が落ちてしまったように見えた。  「私も、大丈夫。ずっと、ナオ君が私との楽しい思い出も、振り返ることができないのが辛かったの。悲しい思い出に埋もれて、全てが無くなってしまうんじゃないかって思って、すごく怖かった。でも、もう平気ね。ナオ君は、私の全てを忘れずにいてくれる。それでいて、先へ進んで行ってくれるって、信じられる」  ありがとう、とひまりが言った。  僕の方こそありがとう、と言って、僕は再会してから初めて、ひまりに触れた。  一瞬、ほんの一瞬だけ、僕はひまりを抱きしめた。  その温かさを、太陽の匂いを、僕は一生、忘れないと思う。  「……送っていくよ」  手を離して、正面からまっすぐにひまりを見ると、彼女は少し寂しさを含んだ声でそう言った。  僕らは手を繋いで、向日葵畑の出口まで向かった。あっという間だった。  あと一歩踏み出せば向日葵畑の外だ、というところで、ひまりは立ち止まった。  「ここで、お別れだよ。私はこの先へは行けないから」  きっとそうだろうな、と予想はしていた。  手を繋いだまま、ひまりは言った。  「ナオ君、家に帰り着くまで、絶対に振り向かないって、私と約束して」 「……わかった。振り向かないよ。約束だ」     
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