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僕が言うと、ひまりは微笑んで頷いた。それから、繋いだ手にぎゅっと力を込めた。
「……ありがとう。ナオ君、本当に、会えて嬉しかった。夏が終わらなければいいのにって、何度思ったかわからないよ。……さあ、もう行って」
ひまりが繋いだ手を、すうっと前に出した。僕は自然と一歩を踏み出す。
「さよなら、ナオ君。元気でね」
「さよなら。……さよなら、ひまり」
僕は言うなり走り出した。
立ち止まったら、振り返ってしまうと思った。だから走った。
家までの、長いようで短い距離を走り切り、玄関のドアを閉めて、僕は息を整えながら部屋へ向かう。
自分の部屋に戻ったところで、僕はドアに背中を付けて寄りかかった。
パタリ、と床に何かが落ちた音がした。
パタリ、パタリと小さな音が連続して響く。
涙が止まらなかった。
僕はその場にしゃがみ込み、声を押し殺して泣いた。自分の気持ちが何とか整理できるまで、自分の気が済むまで、そのまま泣き続けた。
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