第5章

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 普段、家が隣で家族同然なのをいいことに、勝手に私の家に入ってくる彼。でも、私が浴衣姿のせいか、入るのを躊躇しているようだった。  私は、彼にそう言うと 「入る」  当然だろ、と言いたげに家の中に入った。どうせ師匠のお使いで来たんだろう。  リビングに彼を通すと、私は彼にいつもの通り、アイスコーヒーを差し出した。彼はありがと、と言いながらそれを受け取った。 「お前がお祭りなんて、珍しいな。子供のころ以来だろ?」 「うん」  否定、しなかった。  最後にお祭りに行ったのは、まだ小学生の時で、やはり今日の杏樹のように、一人で行くことを学校側に禁止され・・・当時中学生だった憲一さんに手を引かれて行ったのだ。 杏樹くらいの歳の頃、だった。  あれ以来、行っていない。  もう、何年くらい、あのお祭りに行っていないんだろう・・・ 「・・・誰と行くんだ?」 「え?」 「男と、か?」 その言葉には、少しとげがあったような気がした。私は首を横に振った。 「杏樹に頼まれたのよ」  決して私の意志ではない・・・言葉の裏にそんな思いを隠しながら、私はそれに答えた。  そう、私の意志などではない・・・私一人だったら、お祭りなんて行こうともしないだろう。  全部、杏樹がいるから、杏樹に頼まれたから・・・ 「まあ、それはいいんだけどさ」 軽く息を吐くと、彼は言葉をつづけた。     
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