第5章

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 「杏樹のレッスン頼んだ俺たちがこんなこと言うのも変だけど・・・ あんまり杏樹に関わるなよ?」  突然、憲一さんは不思議なことを言った。  憲一さんの顔を見ると、憲一さんは少しだけ、不機嫌そうな顔をしていた。 「最近の桜、レッスン以外に杏樹に関わりすぎだぞ。ピアノ教師の域を超えている」 “ ピアノ教師の域を超えている?”  それは私にも自覚はあった。  先日の熱中症の時の事とか、プールの付き添いの事を指しているのだろうか?それとも、夏の間とはいえ、彼女のお昼を用意して一緒に食べていることだろうか?  師匠はいったいどこで、そんなことを知ったんだろう?  この夏の出来事・・・たとえば杏樹の熱中症の事とか、お昼を一緒に食べていることとかは、師匠には話していない。せいぜい、杏樹のお母さんに報告したくらいだ。  それを師匠と憲一さんが知っている、という事は。杏樹の母から憲一さん経由で、師匠が知ったのだろう。 「しょうがないでしょ?こっちにだって色々事情があったんだから」    言い訳のようにそういったけど、憲一さんの不機嫌は収まらないようだった。 「・・・母さんが心配してたぞ。お前がレッスン疎かにして杏樹と夏休み満喫してるって、さ。 そんな暇があったら、自分のレッスンしろよ。     
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