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そんなんじゃ、秋のコンサート、まともな演奏でいないぞ!」
・・・また師匠・・・か。
私はため息をついた。
“師匠が”、“母さんが”・・・彼の常套句だ。
そして・・・私の一番嫌いなフレーズ。
言われたら、私はそれ以上、反論出来ない。
「秋にはさ、お前、自分のコンサートあるんだから。杏樹と遊んでる暇があったら、自分の事しろよ。ただでさえ、教室の仕事忙しいんだから・・・」
いつもなら、おとなしくその言葉に頷いていた。
それを受け入れるかどうかは別にして、その場では頷いて、その話は終わりにしていた。
それが一番いい方法で、それが一番“大人な対応”だと思っていた。
でも、最近は、憲一さん相手に“大人”を演じるのが、嫌になっていった。
憲一さんから“師匠の命令”の話を突きつけられるたびに、どんどんいやな気分になっていった。
師匠が彼を介して私に伝言をする度に、私の中の大切な何かが削り取られているようだった。
そして、削り取られた後は、何とも言えない虚しさが残るだけ・・・
その感覚に耐え切れなくなった。
ずっと、ずっと・・・・・・
我慢してきた。それが大人だと思っていた。
でも、その我慢も・・・限界!
「・・・いい加減にして・・・」
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