第1章

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「・・・いらない・・・これから作るから、平気」  実際、食事は食べていないけど、ご飯も炊いてあるし、仕事に出かける前、夕食が簡単に作れるように、軽く支度だけしておいた。  最近は、いつもそうしている。外食があまり好きではないので、多少仕事で帰宅が遅くなっても、すぐに夕食が作れるように・・と。 「これから?大変だろ?」 「平気だからっ」  こうやって私が仕事で遅く帰ると、彼が何かしら夕食を用意してくれている。それはそれで、とてもありがたいし感謝しているけど、いつまでも甘えているわけにもいかない。 「遠慮するな。母さんにも、お前にもメシちゃんと食わせるように言われてる」  また、師匠・・・か。  私は内心ため息をついた。  結局、師匠の事を出した彼にかなうわけもなく。私は彼が作った料理を夕食に食べることになってしまった。  彼は満足げだけど、私は、彼のそんな顔をまともに見ることが出来ず、彼が用意してくれた料理に目を落としたまま、彼が帰ってゆく気配だけを感じていた。 
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