異変※

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異変※

あるとき彼がいつものように罵詈雑言を浴びせながら歪んだ愛情をぶつけていたときに異変が起きた。その日は雷が鳴って大雨と風が酷くて家全体が揺れているようだった。縦に雷が落ちたときに、彼は突然震えだして繰り言のように同じ言葉をくり返して、まるで赤ん坊のように手足を丸めたまま頭を何かからガードしていた。 「ごめんなさい、ごめんなさい、もうしません。お願いだからおウチに入れてよ、ママ。」 髪の毛を掻きむしり、ベッドの上で寝返りがうてない新生児のように彼はもがき続ける。今まで散々私をいたぶった彼と同一人物とは思えないほどのヘタレだ。 私はある有名なハリウッド映画を思い出した。憎たらしい悪役の男がライフルで撃ち落とされた照明器具の配線がショートしたその火花を見て、幼い頃、良いとはいえない、いや悪い方に入る家庭環境で抑圧され虐待された記憶が溢れ出して、敵と闘うことを中断して、サブマシンガンを連射する敵の前にふらふらと丸腰で出ていって蜂の巣になって死ぬシーンがある。     
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