脱出

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行く宛てはない。でもとにかく家から少しでも離れたところへとまずはタクシーが拾える駅に向かった。荷物を抱えながら走る。ターミナル駅前の道路を走って横断しようとしたそのとき、酷い衝撃を受けて道路に倒れこんだ。 車の陰から出てきた自転車に轢かれた。そう気がつくまでにしばらく時間がかかった。ロードバイクに乗っていた男性が慌てて自転車を降りて駆け寄ってくる。 「すみません、あのお怪我は?」 「あつ、そのちょっと立ち上がれません。」 正直に答えると男性はポケットからスマホを取り出して、 「警察と救急呼びますね。本当にすみません。」 「えっそれは…。」 事故ということは夫にも連絡されるのだろうか。イレギュラーな事態に戸惑いながらも、なんとかこの難局を乗り切る方法を考えた。男性はすでにスマホで通話し始めてしまった。確かDV被害に遭ってる場合は身内に連絡がいかないようにしてもらえるはずだったような。必死に頭を回転させる。それに事故の事情を聞くときは加害者、被害者別々になる時間があるはず。警察と救急には正直に事情を話すしかないだろう。 男性は警察と救急が来るまでに私をおんぶして道路から端に寄せたり、地べたに直接座らないように上着を敷いたり、申し訳なさそうに色々と世話を焼いてくれた。思い出したように、 「あ、そうだご家族に連絡しなきゃまずいですよね?」 私の左の薬指の指輪に目をやってあたふたした。とっさに私は、     
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