0人が本棚に入れています
本棚に追加
今日の玲香様のカッコいいエピソードを語ろう。
午後5時27分、玲香様は下校中で電車に乗ったところだった。
ただこの日はなにか催しでもあったのか、電車の中は結構混んでいた。ギュウギュウ詰めと言うほどではないが、座る場所はもう殆どなかった。○○駅を通る際に乗る人でおそらく埋まりきるだろう程度だ。事実埋まりきった。
午後5時34分、玲香様は満席状態の中座っていた。最初から座っていたんだから当然だ。
そんな玲香様の前に、杖をついたおばあさんが支える棒……あれなんだっけ? とにかく棒を支えに立っていた。○○駅から乗ってきた人で、おそらく座りそびれたのだろうと思う。
それを認識した玲香様は当然おばあさんに席を譲ってあげたのだ……が。やはり玲香様は素晴らしい方だった。
玲香様は譲る際、あっと何かを思い出したように体をビクリとさせて、そそくさと立ち上がり、そこで初めておばあさんに目を合わせて言ったのだ……どうぞ、と! 玲香様はその後別の車両に移って、目的地までずっと立っていた。
人助け、というとは大げさではあるけど、こういう好意というものは必ずしもまっすぐ伝わるとは限らないのだ。例えばおばあさんがひねくれ者で、情けをかけられたと思って気分を悪くするかもしれない。単純に遠慮するかもしれない。他の乗客も、この子はいい子だなとでも思うのが大半ではあると思うけど、面倒な輩もたまにはいる物だ。
そこで玲香様は、自分になにか事情があって、席を立たねばならない。それならせっかくだから譲りますよ、というポーズを取ることで自然に席を立ったのだ。こうすることで、おばあさんは遠慮なく座れるし、周りも特に気に留めるようなことがなくなる。まさしく真の気遣いなのだ! ただし、せっかくの玲香様の好意は周りには伝わってはいないだろう。いちいち伝えないことが気遣いではあるのだが、それでもちょっと寂しい気持ちもある。
でも、私だけはあなたを見てますよ、玲香様。
最初のコメントを投稿しよう!