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――結論から言うと間に合わなかった。その上、さらなる失敗が重なってしまうことになる。
廊下には景観向上の為なのかなんなのか、脇の棚にちょくちょく花瓶が置かれている。そんな花瓶を、慌てていた玲香様は割ってしまったのだ! 床に破片と水と花とが打ちつけられてしまう。玲香様は軽くパニックになった。担任の先生は融通の効かない人で、教室にいなければたとえ学校内にいたとしても迷わず遅刻にする。今すぐに教室に行かなければ間に合わないが……玲香様は、はぁ、とため息を付いて、近くの空き教室に掃除道具を取りに行った。
割れた花瓶の片付けを優先させたのだ。玲香様の心情としては、せっかくここまで急いできたんだからせめて遅刻はしたくない、と花瓶を後回しにして教室に向かいたかったはずだ。しかし、ここでグッとこらえて遅刻を諦める。ここがカッコいい。破片を放置すれば危ないし、誰か別の人がこの状況を発見すれば面倒は確実だ。遅刻するよりもずっと大変なことになるだろう。はたから見ればその程度の優先順位など簡単につけられるが、実際に渦中にいた玲香様視点ではそう考えるのは難しい。ただでさえ焦っていて冷静とは程遠い精神状態だったのに、しっかりと判断した、そんなところがカッコいい。
玲香様はその後バッチリ怒られた。自分から花瓶を割ってしまったことを告げてもっと怒られた。遅刻して花瓶を割ったのだからしょうがない。言い訳のしようもない失敗だ。特に玲香様の行動についての擁護もなく、ごく普通に失敗を責められたのだった。
失敗はしてしまったけれど、それでも玲香様がカッコいいってこと、私はちゃんと知ってますよ!
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