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2 天分
しかし、弟子になって2ヶ月が過ぎた頃、先生はぽっくりと亡くなってしまった。
春の麗らかな早朝のことだった。第一発見者である典子さんの話だと、先生は眠るように寝床で冷たくなっていたのだそうだ。死因は老衰。顔の見た目から勝手に50歳くらいだと思っていたが、なんと80歳を超えていたのだ。
身寄りのない先生は、遺言書を残しており、遺産の全てを、私と典子さんに譲るとしていた。典子さんはまだしも、私はここに通って、たったの2ヶ月。なぜ私に遺産を譲ろうと思ったのか、まったくの謎だ。
2日後の夕方には葬儀は全て終わったが、遺言書の話でごたつき、帰宅したのは深夜だった。疲れ果て、喪服のまま眠ってしまった。
その夜、不思議な夢を見た。
丸い大きな木の樽の中で、私はふわりふわりと浮いている。薄暗い樽の中に水はなく、ただ宙に浮いているのだ。その浮遊感は心地よく、同時に心許ない感じであった。
翌朝、目覚めると太陽はすっかり上がりきっていた。ベッド横の置き時計は、正午を指している。
久しぶりにたくさん寝た。最近は歳を取ってきたせいか、どんなに夜更かししても八時前には目覚めていた。きっと精神的なものだ。先生の死は、自分が思う以上にショックだったのかもしれない。
しかし長く眠ったせいか、体がとても軽い。私は顔を洗うため洗面所に行った。蛇口に手を伸ばし、そこで腰を抜かした。
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