2 天分

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「あ、これはいる?」  典子さんは、机の中央に置かれた、先生の水晶玉を指差した。 「私、これはなんだか怖くて。先生、この水晶玉を肌身離さず持っていたでしょう? 念が強そう」  確かに不気味だが、年代物のようだし、占いの小道具として重宝しそうだ。しかし先生が亡くなってしまった今、私の占い師の道は断たれたに等しい。それに、この姿! 占いなんてやってる場合じゃない。 「久美ちゃん、この家どうするの?」 「どうするのって……、どうしましょうか。昨日も話したように、私はここに来たばかりですし、なぜ先生が私に財産を譲ろうと思ったのか、さっぱりわからなくて」  すると典子さんは、突然大声を出した。 「そんな言い方、ひどいじゃない!」 「え?」 「あなたがここに戻って来てくれたこと、先生は本当に喜んでいたんだから」 「戻って来たって……。典子さん、何を言ってるの?」 「長い間一緒にいなかったからって、久美ちゃんは先生の唯一の娘でしょう」  ――む、むすめっ? 「娘って、ちょ、ちょっと待って。私がここに来たのは」そこで、はっとした。 「典子さん、遺言書、ありますか?」 「え、遺言書? これのこと?」
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