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「あ、これはいる?」
典子さんは、机の中央に置かれた、先生の水晶玉を指差した。
「私、これはなんだか怖くて。先生、この水晶玉を肌身離さず持っていたでしょう? 念が強そう」
確かに不気味だが、年代物のようだし、占いの小道具として重宝しそうだ。しかし先生が亡くなってしまった今、私の占い師の道は断たれたに等しい。それに、この姿! 占いなんてやってる場合じゃない。
「久美ちゃん、この家どうするの?」
「どうするのって……、どうしましょうか。昨日も話したように、私はここに来たばかりですし、なぜ先生が私に財産を譲ろうと思ったのか、さっぱりわからなくて」
すると典子さんは、突然大声を出した。
「そんな言い方、ひどいじゃない!」
「え?」
「あなたがここに戻って来てくれたこと、先生は本当に喜んでいたんだから」
「戻って来たって……。典子さん、何を言ってるの?」
「長い間一緒にいなかったからって、久美ちゃんは先生の唯一の娘でしょう」
――む、むすめっ?
「娘って、ちょ、ちょっと待って。私がここに来たのは」そこで、はっとした。
「典子さん、遺言書、ありますか?」
「え、遺言書? これのこと?」
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