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3 水晶玉
占い師となり、あっという間に2年が過ぎた。
その頃には、私は占星術よりも、水晶玉占いをメインに行うようになっていた。
私の占いは当たると評判になり、お陰で最近では行列ができるほどだ。更には、この容姿が客寄せに拍車をかけた。妖艶な美女だと、多くの客や関係者が噂を広めた。客のなかには、私と会うために、遠方から来る人もいるほどだった。
そして喜ぶべきことなのか、あの日、この才能と容姿を授けられて以降、まったく老ける気配がない。もう、元の平凡な自分の顔を、思い出すこともなくなっていた。
水晶玉は私自身の未来は語らなかったが、何の問題もなかった。私は人生で最高に幸せな時を過ごしていたからだ。人間とは不思議なもので、あれほど結婚したかった私は、経済的に余裕がでたせいか、その欲望はまったくなくなってしまった。
何不自由ない収入と自由。そして唯一無二の才能と、衰えることのない美貌。全ては先生と、この水晶玉のおかげ。私は水晶玉を肌身離さず持ち歩き、ベッドの横に置いて眠った。
ただひとつ、気になることがあった。それは仕事中に起きた。水晶玉からメッセージを受け取ると同時に意識がおぼろになり、目の前に闇が訪れる。しかし口はすらすらと動く。問題なく客にメッセージを伝えることはできるのだが、どうにも気味が悪い。
1年前は3ヶ月に一度ほどしかなかったが、最近では、週に2、3度起きていた。それはまるで、水晶玉に操られている感覚だった。
「きっと働き過ぎなのよ」
私の話を聞いた典子さんはそう言った。
「ええ、確かにそうかもしれない。2年間、ほとんど休みなく働いてきたから」
「水晶玉を覗いてばかりじゃなく、たまに旅行でもしたらどう?」
「そうね。たまにはこの子にも休息をあげなきゃね」
私は水晶玉を見つめた。
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