3 水晶玉

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 一睡もできずに朝を迎えた。  行きたくない。しかし今日は予約が入っているのだ。リビングに避難していた私は、寝室の扉を開けた。そこはいつもと何も変わっていなかった。水晶玉も、昨日のことが嘘のように静かだった。 「考えたって、わからない」  そう意識的に声を出し、私は水晶玉を鞄に入れた。  不安を抱きながら、客を迎えた。  しかし占い始めると、不思議なほどに心が落ち着いた。水晶玉からも、いつも通りにメッセージは届いた。何事もなく予約客の占いを終え、気がつくと、今日は珍しく客が一人も並んでいない。  さすがに眠気から、頭がぼうっとした。私は店じまいを決め、帰る準備を始めた。 「美しい水晶玉ですね」  突然、背後から声をかけられた。振り返ると、恐ろしく美しい男が立っていた。流暢な日本語ではあったが、高身長で、ダークブロンドに輝く髪、青みがかった虹彩から察するに、西洋人の血が混ざっているのだろう。黒いスーツをお洒落に着こなすさまは、まるで西洋の貴族のようだ。  男に優しく微笑みかけられ、私は陶然としながら占いの説明を始めた。 「水晶を使った占いと、西洋占星術を組み合わせ、独自の占いをしております」  男はおもむろに席に座った。 「その水晶玉だけで占ってもらえますか?」 「……水晶占いですね。わかりました」  私は椅子に腰掛けて、男を見つめた。 「何をメインに占いましょう」 「そうですね。では、恋愛運を」
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