3 水晶玉

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 私は、男への淡い恋心を胸に秘め、水晶玉に視線を移した。  しかし、さきほどまで何も問題なかった水晶玉から、メッセージが届かない。どんなに集中しても、無反応なのだ。邪な気持ちが、水晶玉に伝わったとでもいうのか。 「いかがですか?」  私がいつまでも無言で水晶玉を覗いているので、男は私に声をかけた。 「え、ええ、少し反応が鈍いようで」 「そうですか。水晶玉のご機嫌が悪いのですかね」  薄ら笑いを浮かべた男が水晶玉に顔を近づけると、ふと昨夜のことが思い出された。背筋がすっと冷たくなる。  しかし、どうしたというのだ。これだけ反応がないのは初めてだ。男の視線が痛い。 「あの、もしかして、恋をしたい気持ちがない、ということはございませんか?」  慌てた私は、ついそんなことを口走った。 「まさかそんな。だって僕は、今まさに恋をしているのですから」  男の言葉に顔を上げた私の眼前に、その端正な顔があった。私を見つめる、美しく澄みきった泉のようなその瞳に、吸い込まれそうだ。 「ずっと探していたのですよ。あなたたちを」  男の声が不自然に響いた。  ――あなた、たち?
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