1 不運からの脱出

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 しかし、それは現実になった。  10月中旬に催された出会い系パーティーで、私は1人の男性に声をかけられた。大手広告代理店勤務の穏やかな雰囲気の人で、私たちはすぐにお付き合いを始めた。しかし、ほどなく彼の二股が発覚。1ヶ月ちょっとで破局した。 「あれ、これって……」  そう、あまりのトントン拍子に浮かれ、私は占い師の言葉をすっかり忘れていたのだ。  衝撃だった。  ここまで占いが的中したのは初だった。悪い男に騙されたことなど忘れてしまうほど、私は興奮していた。私はここ数年、さまざまな占い師たちから、不確定要素の多い言葉に翻弄され続けてきたのだ。占いなんて所詮そんなものだと、諦めかけた矢先のことだった。  私は再びその占い師を訪ねた。 「あの、私――」 「やはり、あの男性とは、ご縁がなかったようですね」 「えっ!」  前回ここに来たのは半年近く前だというのに、占い師は私のことをちゃんと覚えていた。 「はい。だめでした」 「今日は何を占いますか?」 「えっと、じゃあ、仕事運をお願いします」  私がそう言うと、占い師は生年月日までも記憶しているのか、そのまま何も言わずに、水晶玉を覗き出した。 「仕事は、どこを目指したいか、すぐに決まるでしょう。そうなれば、あとは心のまま流れに沿って進みなさい」 「すぐに決まる?」 「はい」  期待外れだったか。私はその漠然とした具体性のない返答に肩を落とした。しかし同時に緊張がほぐれ話しやすくなった。
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