7人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、それは現実になった。
10月中旬に催された出会い系パーティーで、私は1人の男性に声をかけられた。大手広告代理店勤務の穏やかな雰囲気の人で、私たちはすぐにお付き合いを始めた。しかし、ほどなく彼の二股が発覚。1ヶ月ちょっとで破局した。
「あれ、これって……」
そう、あまりのトントン拍子に浮かれ、私は占い師の言葉をすっかり忘れていたのだ。
衝撃だった。
ここまで占いが的中したのは初だった。悪い男に騙されたことなど忘れてしまうほど、私は興奮していた。私はここ数年、さまざまな占い師たちから、不確定要素の多い言葉に翻弄され続けてきたのだ。占いなんて所詮そんなものだと、諦めかけた矢先のことだった。
私は再びその占い師を訪ねた。
「あの、私――」
「やはり、あの男性とは、ご縁がなかったようですね」
「えっ!」
前回ここに来たのは半年近く前だというのに、占い師は私のことをちゃんと覚えていた。
「はい。だめでした」
「今日は何を占いますか?」
「えっと、じゃあ、仕事運をお願いします」
私がそう言うと、占い師は生年月日までも記憶しているのか、そのまま何も言わずに、水晶玉を覗き出した。
「仕事は、どこを目指したいか、すぐに決まるでしょう。そうなれば、あとは心のまま流れに沿って進みなさい」
「すぐに決まる?」
「はい」
期待外れだったか。私はその漠然とした具体性のない返答に肩を落とした。しかし同時に緊張がほぐれ話しやすくなった。
最初のコメントを投稿しよう!