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占い師の先生は色白で鼻が高く、まるで西洋人のようだった。訊ねたら、本当にフランス人の母を持つハーフだと教えてくれた。さらには2年前までは、世界各地を放浪していたらしい。
どうりで、こんなにすごい的中率なのに無名なわけだ。
名前を葉山志乃といい、意外に普通の名前で拍子抜けしたが、その占いは独特だ。西洋占星術をベースに、水晶玉を使った神秘的且つ妖し気な、スクライングと呼ばれる技法を組み合わせたもので、先生が水晶玉を覗く姿は、その容姿もあいまって、まさに魔法使いだった。
その日も先生のご自宅で、占星術の講義を聞き終え、先生の入れてくれた紅茶を啜った。先生は横で水晶玉を磨いている。
それにしても、先生の弟子になり1ヶ月。いまだに自分に才能があるのかわからない。今まで生きてきて、霊的な能力を感じたことなど一度もなかったし、現にこうやって占いを学んでも、何一つそんな実感が湧かないのだ。
弟子だからと、先生はお茶代すら受け取らないので、なんとか続けているが、私には時間的余裕もない。運命を変え、早急に占い師になりたいがために、バイトを辞めてまで、毎日のようにここに通っているのだ。才能がないならないと、早めに教えてもらわなければ、生活費で貯金が底をついてしまう。
「先生は、どうして私に才能があるなんて思われたのですか? 何かの間違いではないかと、不安になってきたのですが」
私は思い切って、先生に本音をぶつけた。
「私の買い被りだと?」と先生は冗談まじりに微笑んだ。
あまりに自分が成長しないものでと謝ると、先生は私の目をじっと見つめて言った。
「あなたの内に、私の分身が見えるのです」
「分身?」
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