0人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなこと言っても返してなんてやらないよ)
少し遊んでやれと思い、部屋中を走り回る。拓馬は必死に僕を捕まえようとするが、それを華麗にかわす。
「もう何やっているの、拓馬?」
完成したハンバーグがのった皿をもって、リビングに亜美がきた。
「い、いや…ただ、シロと遊んでいただけで…」
苦笑いをしながら、拓馬はごまかす。
(この箱のことを隠そうとしている?…もしかして、亜美には見せられないものなのかな?なるほど)
僕は亜美の足元まで来て、くわえていた箱を置いた。
「ワン」
「…シロ?何?その箱は」
「あっ!それは」
拓馬の焦った表情に、僕はほくそ笑んだ。
(これで拓馬は亜美に嫌われて、亜美との生活を邪魔されないぞ!)
亜美は箱を手に取り、ゆっくり開けた。その中を見て、亜美はびっくりした表情で固まった。
「拓馬…これって」
亜美は箱から何かを取り出した。箱の中身は指輪だった。
「ごめん。本当はもっとちゃんと渡せればよかったんだけど」
拓馬は亜美に近づき、亜美の手から指輪を抜き取る。指輪を亜美の左手の薬指にはめた。
「亜美ちゃん、僕と結婚してください」
真剣なまなざしで見つめる拓馬に亜美は瞳から涙が流れた。
「え!亜美?」
急に泣き出した亜美に驚いて、拓馬はうろたえた。
(え!拓馬、よくも亜美を泣かしたな!)
僕は拓馬に吠えて、威嚇をした。
「ウゥ――――ワンワン!」
「うわ!シロ、やめろ」
「あはははは」
シロに吠えられて、ますます混乱した拓馬の姿を見て、亜美は大きな声で笑った。
最初のコメントを投稿しよう!