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「ごめんね。…うれしすぎて、夢なのかなと思って。ヘタレの拓馬がプロポーズしてくれるとは思わなかったし」
涙を拭きながら、幸せそうに笑う亜美を見て、僕は拓馬が亜美にとってうれしいことをしたのだと気づいた。
「ヘタレって。亜美まで…」
「本当のことでしょ?」
亜美は、うつむいて拓馬の手を握った。
「お化けで怖がって私に抱きついてくるような拓馬、バナナの皮で転んじゃうような拓馬も」
「亜美~」
「シロとじゃれ合う拓馬も、何でも真剣に取り組む拓馬も、落ち込んでいるとき何も言わずにそばにいてくれる拓馬も…」
亜美は拓馬の背に恥ずかしそうに腕を回し、抱きしめる。
「大好き、だよ。…ずっと一緒にいようね」
顔を真っ赤にして亜美は拓馬につぶやいた。
「…亜美。顔を見せて?」
「恥ずかしい。…だって、絶対顔赤いもの」
「亜美?」
亜美は腕を緩めて、顔を上げる。拓馬は亜美の顔にゆっくり手を這わせる。
「ありがとう」
拓馬は優しく亜美に口づける。
(拓馬は気に食わないけど、亜美が幸せそうだし。今日のところは亜美と二人で夜を過ごすといいさ)
幸せそうな二人を見ながら、僕は静かに自分の寝床に戻った。
拓馬のプロポーズ作戦は偶然の出来事のおかげで成功したのだった。
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