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「部活は8月11日まで。お盆期間中は先生たちもお休みみたい」  お盆が狙いめかな?と、意外にもきちんと下調べを済ませていたらしい小早川さんが提案するけれど、それは極めて短絡的な結論で、詰めが甘いと言わざるを得ない。 「先生が誰も来ないってことは、その期間中、校舎には機械警備がかかるの」 「つまり?」 「誰にも見咎められない代わりに、わたしたちは屋上から一歩も出られない。廊下に戻った途端、警報が鳴って警備会社が駆けつけてくるわけ。じゃあお盆の間ずっと屋上で息を潜めて暮らせるかっていうと――夜だけならまだいいかもしれないけど、真夏の日中、あんなところにいたら確実に干からびるよね。お風呂もトイレも当然ナシ」 「それは…無理だね」  わかってくれたみたいだね。  話が早くて助かる。 「だから狙うのは、お盆前、それもできるだけお盆に近いほうがいい」 「どうして?」 「流星群には極大っていうのがあって、そこから考えると、今年は8月12日からの3日間が観測しやすいはず。この3日間に近ければ近いほうが、ペルセウス座流星群を見られる確率が高くなる」 「でも、お盆休みは12日からの5日間だね。お盆のあとじゃ遅い…」 「そう。そして11日も駄目。その日の夜から校舎内の警備がセットされるから」  小早川さんと、目が合う。  二人、同じことを考えていると、その瞳に浮かぶ悪戯っぽい色で、わかる。 「「だから狙うのは、8月10日」」
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