オレの真夜中だけの恋人

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 オレが恋人に会うのを許されているのは、真夜中だけだ。  少なくとも昼間に堂々と会えるような清く正しい関係ではない。全然ない。  だから誰もが眠っているような真夜中に、オレ達はこっそり会って、ただ話をして、時々お互いの手を重ねあっては小さく笑ったりして。それでおしまい。  昼間から堂々と会える関係ではない2人が、堂々と道を歩けるワケもないから、デートらしいデートをしたこともない。  開けた窓越しにこっそりと話すだけ。それが精一杯。  それだけの関係だけど、きっと世間からは間違っているだの、身勝手だの、非難される関係だけど。  オレはそんな時間が何よりも幸せで、この時間を手放すつもりなんて、少しだってなかった。  幸せになれないと言われても、破滅しか待っていないと言われても。  それでもいいんだって。  オレはこの関係に酔ってさえいたのかもしれない。熱に浮かされていたのかもしれない。  だけどやっぱり、恋人と会っている時。恋人を想う時は、理屈じゃなく幸せだ。  道徳に反しているっていうなら、道徳なんてクソくらえだと、叫んでしまえるほどに。
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