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今分かっているだけでも、重軽傷者は十名以上出ているが、幸いまだ死人は出ていない。
俺は食い入る様にテレビを見た。
この事件は絶対に何かある。
俺のフリーライターとしての直感がそう言っているのだ。
この有栖という男はいいネタになる。
若くして絶望し、無差別殺人事件を起こした青年。
その過去には衝撃の事実がある。
こんな見出しがいいだろうか。
俺は久し振りにやる気が出た。
絶対にこの記事は売れる。間違いない。
居ても立っても居られないが、窓の外を見るともう夕陽は顔を隠し、あたりは真っ暗になり月光が部屋を照らしていた。いくら夏といえど何もしなければ夜がやってくるのが早く感じる。
早速、明日からこの無差別殺人事件について調べよう。
俺はキッチンから最後の一本となった缶ビールを取り出し、賞賛を浴びるほどの記事を書いた自分を想像しながらビールを一気に流し込んだ。
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