佐伯の調べ

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「すごいね、この人…… 死刑になりたかったからこんな事したなんて…… 命が勿体無いよ…… 」 果穂は目を細めて小さな声でそう言った。 確かに酷い事をする人間だ。 自分が死刑になりたかったからこんな無差別殺人事件を起こすなんて普通では無い。 しかし、俺は少し犯人の気持ちが分かる気がした。 十年前に俺は交通事故を起こした。運転免許を取ったばかりで俺は調子に乗っていたのだ。 その時は本当に死にたくなった。しかし自分で死ぬ事は怖くて出来ない。その時に初めて死刑になったらどれだけ楽だろうかと考えたのだ。 しかし今考えると馬鹿げた話だ。あの時の俺は普通の精神状態ではなかった。 おそらくこの犯人も普通の精神状態では無かったのだろう。
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