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とあるマンションの一室でばったり出くわした。ここはもちろん彼の部屋でも私の部屋でもない。ここの住人のことは簡単にだけど調べている。アラフォー独身男性でいかにもエリートですという感じの奴。彼はもちろんもっと若いし、エリートではなく普通の感じの優男だ。
「えっと、こんにちは?」
「あっ、こんにちは……?」
なぜか間抜けな挨拶をする私達。そもそも同業者なんだろうからさっさと仕事を終わらせて逃げるべきだろう。……私も人のこと言えないけど。
そういえばこのあいだ同業者の噂を聞いて仕事場被りそうだなとか思ったことを思い出した。名前は……
「現ナマのヒデ?」
「あ、はい。そう呼ばれることもあります。ところで貴女は、時計屋のミナ、さんですか?」
あっ、本格的に同業者だしなんか名前まで知られてた……ツラァ……
「まあ、お互い自己紹介をしている暇はないでしょうから、さっさと仕事してしまいましょう」
「そうですね」
そう言って別々に作業する。やっぱり彼は名前の通り、現ナマしか狙わないようだ。私も人のことは言えない。基本的に時計は全部持っていく。まあ、彼ほど徹底してはいないので、そこらの高級そうなものもまとめて鞄に入れるが。
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