愚痴は言えても

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「なに、黒川になんか言われた?」 「……べつに」 「じゃあ、また雑用押し付けられたんだ」 「……」 「図星?」 ケラケラ笑う河合先輩に、私は小さく頷く。 「……入ったの、2週間しか変わらないのに。しかも、いつも私ばかりに仕事押し付けてくるんです。そんなにイケメンでもないくせに。雑用頼むのが許されるのは、イケメンだけだってんですよ」 「ははっ、男ってのは、なーんか女より上に立ちたくなるもんなんだよ。こいつガキだなって思ってろ」 「先輩は大人っすね」 「……そーでもねーよ。エロいことと下ネタしか考えてないから」 「前言撤回します」 私は看板を倉庫から出し、一息つく。 「……河合先輩、戻らないんですか?」 「うん。サボりだから」 「……私は冷房が効いた天国に戻りまーす」 「戻らないとムカつく人に怒られるもんな」 「……」 ニッと笑う先輩が憎たらしい。 バイバイと手を振られる。 黒川さんの時は、何も思わなくて。むしろ腹がたったのに。 なんで、可愛いなんて思えちゃうんだろう。 これが、惚れた弱みってやつだ。
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