涼木 実遥(すずき みはる)

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教室の、今の私の席はとても恵まれていると思う。 * 涼木実遥(すずき みはる) 窓際の、後ろから二列目。 顔を左に向けたら、生い茂る木々の間を飛び交う鳥達を愛でることができるけど、今の私の興味は、そこにはない。 右手で頬杖をついて、視線を右に向ける。 廊下側の、前から二列目。 彼は今、ノートに向かって、必死に何かを書いている。でも、たぶん、黒板の内容ではない。だって、今、歴史の時間だし。歴史の先生は、テキストを読むのが中心。板書は滅多にしない。 先生が教科書を読みながら、教卓を離れる。彼の方に向かって、歩く。彼はさっと、机の上半分に置き去りだった教科書を、自分の方に引き寄せた。そのまま、彼の席を離れる先生。 しばらくすると、彼はまた、教科書を自分から遠ざけて、書き物を始めた。 次の時間の数学の宿題だろうか。彼は数学が得意だから、いつも宿題を後回しにして、数学の前の授業の時間にやっているのだ。 彼が、手を止めた。たぶん、数学の宿題が終わったのだ。そして、再び、テキストを自分の方に引き寄せる。テキストに視線を向けてはいるけれど、きっと、全く頭に入っていない。だって、見始めてまだ大した時間も経ってないのに、瞼が、重そう。数学の宿題をしていなくったって、歴史の時間はいつもそうだ。 そうこうしているうちに、先生が今日のポイントをさらっと説明していると、授業終了のチャイムがなった。学級代表が号令をかけて、授業が終わる。
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