樹神祀梨は飲んだくれ
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樹神祀梨は飲んだくれ

 自由の象徴であるはずの大空は本当はとても不自由だ。  特に人間が飛び立つ瞬間は。  僕の横にいる彼女――樹神こだま祀梨まつりにとって、そんなことはどうだって良いのだろうけれど。  東京湾からの強風を受けながらも、鹿児島空港行きの航空機は無事離陸に成功した。  上空で決められたルートを旋回。飛行姿勢が安定したので、シートベルトを外してリラックスできる状態になる。  しかし祀梨は体を固定するシートベルトを外さない。  到着までの時間を睡眠に費やすと決めた彼女は、パッセンジャーボーディングブリッジが付いたままの時分からアイマスクを着用し、あっさり夢の世界に旅立っていた。  夏休み前の平日である本日の搭乗率は40%前後。  隣に誰も人がいないというのも、祀梨の爆睡モードに拍車をかける要因となったのかもしれない。  羽田から鹿児島まで、航空機が空を飛んでいるのは2時間にも満たない。  それは普段から寝不足の人が睡眠に遣った場合は、あまりにもあっと言う間に過ぎ去っていく程度のものでしかない。  慢性的に睡眠時間の足りない祀梨の場合、体感的にはもしかしたら一瞬のことだったかもしれない。     
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