気になるその子

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何回かその子のライブに足を運んだ数日後のある日、明晰夢を見た。夢の中で夢だという事に気付き、自分で夢の中でやりたいことを創造出来るような夢だ。 現実的には夏ではないが、その子と夏祭りに行っている。その夢の空間は全体として暗い。そこまでは、ただ見ている夢だったが、夢の中で、夢ということに気付いた。 そして、夢の中で自分の願望を実現しつつ、起きてみたら、その夢は現実と区別がつかないほどだった。脳内だけでなく、体で体験したかのような感覚が残っている。 隼人は以前、銃で撃たれる夢を見ていた。 左胸は確かに激しく撃ち抜かれて、力士に体当たりされたような非常に激しい衝撃を感じて、円形のお茶の缶ほどの穴が空いてしまったが、全く流血はしていなくて、体の内部は黒くて見えない。生きている感覚もある。 そして目が覚めると生きている。 夢の中での感覚と、打たれた胸の箇所に鮮明に感触が残っていて、両方とも、起きて感じている「現実的な」感覚だった。 夢は、気になってきたことに、やや決定的であるとも言えた。隼人はこの「体験」は必ず未来で起こることと位置付けたから。 お祭りからやや離れた国道のような通りで、人は全くいなく静かで、公園のような駐車場のような場所でその子と二人で休んでいた。簡素な空間なので夢の中で創造したという気付きもあった。理由は分からないが、その子の願望で、隼人はその子と抱擁した。柔らかく心地よい体温を感じていた。それと同時に、蛇が獲物を捉える速さで、それに気付く間も無く、唇は重ね合わさっていた。 隼人は、それらの事は、今までの経験の合成ではと気付きもした。冷静さを保ちながらも、耳の奥では微かにお祭りのその地域の囃子が鳴りつつ、鈴や鉦の音が微かに意識され、夢を創造する以外の明晰さもあった。 そして、その2人の空間の周りは静寂が覆っている。柔らかいものが優しく深く触れ合い、猫を抱いた時の柔らかい感覚だった。その空間にはお祭り全体の歓声や盛り上がりに優って、深い喜びは周りを包み込むような光が生じていて、その色合いは太陽光のようだった。
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