気になるあの人

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「藤田さん、今日の夜あいてる? 飲みにでも行かない?」  レジでぼーっとしていた私に声をかけてきたのはバイト仲間の田中くんだ。最近熱心に私のことを誘ってくる。 「ごめん、予定あるから」  そっけなく断る。  田中くんが私のことが好きなのは分かっているが付き合う気にはなれない。  見た目は結構好きなんだけど、性格がチャラくて好きになれないから。 「そっかー。時間ある時さ、いつでも声かけてよ。藤田さんの誘いならいつでも行くから」 「うん、時間ある時にね」  退屈なだけのバイトも終わり家に着いた。ベッドで横になってスマートフォンをチェックする。  適当にSNSで友人たちの発言を見ていると広告が表示された。マッチングアプリの広告だ。  私はもう20歳になるけど恋愛経験がない。誰かと付き合うことに興味はあるけど、これと言った人に出会ったことがないから。 「こういうアプリを使えば良い人に出会えるのかな」  広告をタップしてアプリを入れてみた。ほんの少しの期待を込めて。  まずは最初にプロフィールを入力するんだ。ぽちぽち入力していく。  好きな映画? 映画はあんまり見ないけど、昔家族で見た「この森で、天使はバスを降りた」は面白かったなぁ。これでいいや。  プロフィールを入力して始めると、すぐにメッセージが届いた。早いなぁ。 「俺もその映画、好きだよ」  名前にはトモヤと表示されている。普通、挨拶くらいするもんじゃないの? そう打ってみる。 「ごめん 同じ映画が好きな人を見つけて嬉しくなっちゃってさ。はじめまして、トモヤです」  トモヤは映画が好きなんだろうか。聞いてみよう。 「映画はたまに見に行くくらいかな。本を読むほうが好き」  私と同じだ。どんな本を読むんだろう。 「最近は実用書が多いけど、結構文学も読むんだ。あとはラノベとか」  じゃああの本は読んだかな。 「読んだ読んだ、面白かったよね。あの作者の作品で言えば……」
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