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母親が大好きで毎週見ていた刑事ドラマに、浅島潤は出演していた。
役どころは主人公の後輩の新人刑事。
クールに事件を解決する主人公とはうらはらに、熱血で、時に感情に任せて行動してしまう新人刑事の役を、浅島潤は見事に演じていた。
素直に言おう。
初恋だった。
テレビ画面越し、正義について熱く問う刑事に、私は夢中になったのだった。
やがて私の愛しの刑事は、俳優が演じているものだと意識するようになる。
たとえば、ドラマの宣伝の為に出ているクイズ番組で。
たとえば、トークバラエティで。
たとえば、朝のワイドショーで。
彼はいつも知的で穏やかだった。
インタビュアーの甘ったるい声に、彼はクールに明瞭に返事を返していた。
こんな人がいるんだ。
私は俳優・浅島潤にも惹かれていた。
スラリとした体躯、涼しげな目元。
笑った時に目立つ笑い皺が特徴的で絵になる。
身の回りにはこんな人はいない。
よく考えれば当たり前のことだけど、当時の私には衝撃的だった。
クラスで一番足の速い男の子も、クラスで一番イケメンな男の子も、浅島潤のかっこよさと比べたら霞んでしまう。
当時、浅島潤は25歳。
歳の差はあれど、私にとって、紛れもなく初恋の人だった。
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