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後輩が話しかけてきて、私は我に返った。
「うんわかった、置いといてくれる?」
「はーい。お願いしまーす」
やばいやばい、仕事中だった。
上の空になっちゃってた。
自分の頬をパンパンと叩いて気合を入れ直す。
昨日の(正確には今日深夜の)なしこさんの投稿はたくさんのいいねがついている。
人気投稿ランキングにランクインしていたから、さらに多くの人に見られて評価を集めるだろう。
なんか、やだな。
綺麗事を言うつもりはない。
ないけど、あのバツ印が頭から離れなかった。
結婚なんてしてほしくなかった。
ずっと誰のものでもないままでいてほしかった。
けれど。
バツ印で消すことなんてできない。
一瞬頭をよぎったのは、なしこさんに抗議することだった。「いくらショックでもあの画像はひどくないですか」「ファンの品位が疑われます」「結婚したくらいでバツ印なんて」など、いろんな文章が浮かぶ。
でも、送信する気にはなれなかった。
普段あれだけ的確な感想を書く人が、あんな投稿をするくらいショックだったのだろうと想像すると、どうしても送信する手は鈍った。
気持ちは、わかるから。
同じファンとして。
今日一日の仕事を終えて帰宅する。
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