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僕は、中学の途中まで過ごした街を、母に連れられて去った。
それまでは親類の敷地内で暮らしていたが、祖父が亡くなったことで相続問題が顕在化し、そういう類を嫌う母が実家に愛想をつかしたという顛末らしい。
その後、都心での細々とした暮らしが始まった。
転校したてでは内申書も芳しくなく、一端の進学校への道は深い茨ですっぽりと覆われた。
元々多くを期待できるような人生ではないと昔からわかっていたはずだった。
とはいえ、若かりし日の僕とってそれは、軽く絶望に等しく。
結局のところ、明日とは、昨日今日の連続でしかなくなってしまった。
ー明日は来るものじゃない。自分で創るものだよ
僕にそう告げた少女。
顔も名前も全く思い出せないが、白いセーラー服を着ているイメージがある。
最近、日常の瑣末なひとコマに狙いを定め、僕の思考をかき消すように無理矢理降臨するその言葉と少女は、急激に存在感を増し初めていた。
そして、ある日とうとう。
夢に、見た。
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