4人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
莉那は何だか見覚えのある場所にいた。
辺り一面が霧で覆われていてはっきりとは見えないけれど、なんだか懐かしい感じがした。
だけどあまりにも静かすぎる空間が不気味で寒気がする。
まるで世界にたった一人しかいないような、恐怖が襲ってきた。
早くその場から離れたいが、霧が濃くてゆっくりと歩くほかない。
歩き進める内に、少し先にぼんやりとオレンジ色の灯りが現れた。
その灯りにすがるような思いで足早に歩く。
灯りが近づくにつれて、周りの景色がはっきりと見えるようになってきた。
そこは森の中だった。
辺り一面が木や草で生い茂り、何種類もの虫の声が聞こえる。
灯りがともされている一番大きな木の根元に、人がやっと入れるくらいのドアがあった。
その上には看板があるが、見たこともない文字が書かれている。
莉那は恐るおそるドアをノックした。
中からの応答はない。
今度は勇気を出して、大きな声を出しながらノックした。
「誰かいらっしゃいませんか?」
それでも中からの応答はなかった。
(もうこんな所にいつまでもいたくない)
莉那は思いきってドアノブを捻った。
驚くほど簡単にドアは開いた。
「お、お邪魔します」
部屋の中は思っていた異常に広い。
床から天井までぎっしりと本棚になっていて、その中に様々な色をした本が隙間なく並んでいる。
「もしかして、ここは本屋さん?」
莉那は辺り一面を見渡し、気になる青い本を手に取った。
やはりその本にも、見たことのない文字が書かれていた。
その瞬間、一気に色々な情報が頭に入ってきて莉那はその場に倒れ込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!