第1章

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莉那は何だか見覚えのある場所にいた。 辺り一面が霧で覆われていてはっきりとは見えないけれど、なんだか懐かしい感じがした。 だけどあまりにも静かすぎる空間が不気味で寒気がする。 まるで世界にたった一人しかいないような、恐怖が襲ってきた。 早くその場から離れたいが、霧が濃くてゆっくりと歩くほかない。 歩き進める内に、少し先にぼんやりとオレンジ色の灯りが現れた。 その灯りにすがるような思いで足早に歩く。 灯りが近づくにつれて、周りの景色がはっきりと見えるようになってきた。 そこは森の中だった。 辺り一面が木や草で生い茂り、何種類もの虫の声が聞こえる。 灯りがともされている一番大きな木の根元に、人がやっと入れるくらいのドアがあった。 その上には看板があるが、見たこともない文字が書かれている。 莉那は恐るおそるドアをノックした。 中からの応答はない。 今度は勇気を出して、大きな声を出しながらノックした。 「誰かいらっしゃいませんか?」 それでも中からの応答はなかった。 (もうこんな所にいつまでもいたくない) 莉那は思いきってドアノブを捻った。 驚くほど簡単にドアは開いた。 「お、お邪魔します」 部屋の中は思っていた異常に広い。 床から天井までぎっしりと本棚になっていて、その中に様々な色をした本が隙間なく並んでいる。 「もしかして、ここは本屋さん?」 莉那は辺り一面を見渡し、気になる青い本を手に取った。 やはりその本にも、見たことのない文字が書かれていた。 その瞬間、一気に色々な情報が頭に入ってきて莉那はその場に倒れ込んだ。
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