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第1章 半世界
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「この世界の半分をおまえにやろう」
昔どこかの魔王が言った言葉だ。
世界の半分…
赤道を中心に半分?
タテに半分?
「…ン!ブン!聞いてたか!?」
「…はい?」
「おまえ、たまにボーっとする時あるよな。そんなに考え込むような事でもあんのか?」
あまりにしょーもない事を考えていただけに、適当に返事をしてその場をやりすごした。
彼は幼稚園から一緒の、いわゆる腐れ縁のトム。名前の由来は…
それはまたにしよう。
オレはブン。
特に大きな苦労もなく、ただ何となく今日までを過ごしてきた。
ただ思う時はある。
生まれてきたからには、何か大きな事でもしたいなと。
大きな事と言っても、別に犯罪的な事ではないが。
適当に返事をしてると、トムがまた言ってくる。
「おい、ブン!聞いてるのか?」
「…ああ、聞いてる、聞いてる」
「聞いてないヤツの返事じゃねーか。」
そう言いながらもトムは気にせず話しを続けてくる。
「…で最近おもしろい法律が決まったみたいだぜ。
『一つの町の半分をあなたにおまかせします』ってキャッチコピーで、どこかの町の行政に口出し出来る権利が無作為に選ばれるんだって。」
「…ふーん。陪審員制度みたいな?」
「あー!そうそう!そんな感じに選ばれるみたい。
オレが選ばれたら、いろんな意味で活性化の為に助平な格安店助成制度だな…。
…何だその目は…。」
トムに冷たい視線を送りつつ、なかなかおもしろそうだなと感じていた。
一つの町の半分…。
なんだか魔王からのお誘いみたいだ…。
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