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夏が来ると
渚が圭人と出会ったのは、小学五年生の夏だった。
当時サーフィン好きな父は、海沿いで営んでた小さなカフェと並行して、夏の間だけサーファーが集える海の家を経営していた。
圭人は十六歳の頃に、夏休みを利用して海の家のアルバイトとして初めてこの街にやって来た。
アルバイトの期間中は渚達の家の空き部屋に寝泊まりをし、バイトが始まる前にサーフィンをし、働いて、またサーフィンをするという毎日。
「違うよ、圭人くん。もっと膝を曲げないとダメだよ」
海沿いの街育ちで、幼い頃からずっとサーフィンをしていた渚は、父や兄の湊と一緒に、圭人にサーフィンを教えることもあった。
「こうかな?」
「違うよ、こうだよ!」
当時小学生だった渚に、圭人は五歳年上というプライドを捨てて、色々聞いてきた。
その年の夏が終わる頃には、圭人はちょっと頼りない兄のような、親友のような不思議な存在になっていた。
圭人が帰ってしまう夏休み最後の日、渚は寂しくて、
「圭人くん、帰っちゃ嫌だ!!」
と、ダダをこねてしまった。
「また来年来るから。そしたらまた、サーフィン教えて」
圭人は泣きじゃくる渚の頭を優しく撫でながら言った。
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