夏が来ると

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「今年の夏は圭人、来ないかも知れないな」 湊が携帯の画面を見ながら、そう呟いたのは三月だった。 湊によるとどうやら、圭人は東京の大学に行くことが決まったとのことだった。 渚は今年の夏は圭人に会えない思うと、苦しくて苦しくて、どうしようもなくなった。 しかし嬉しいことに湊の発言は外れ、大学生になった圭人は、再びこの街に戻ってきた。 また少し大人になった圭人の顔を見たら、渚はどうしようもなく切なくなった。 「東京の大学ってさ、たくさん人がいるんでしょ?可愛い子いる?」 「なんだよ、急に」 「彼女できた?」 「いたらここに来てないよ」 圭人は少し切なそうに笑うと、渚の長い髪を優しく撫でた。 まだ十四歳だった渚には、その時の圭人の切なそうな顔の意味が分からなかった。 次の年も圭人はちゃんと夏にやって来た。 しかしこの年は、渚は高校受験に終われ、なかなか圭人と話す時間が持てなかった。 これくらいの時期になると、圭人のサーフィンの腕はかなり上がり、渚が教えることはほとんどなくなった。 むしろ海の家に来るサーファーに、教えているくらいだった。 この年の渚は勉強をしていても、圭人のことばかり考えていた。     
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