夏が来ると

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受験が無事に終わり、高校生になった夏。 「それ、制服?なんかすっかりお姉さんになったなー」 部活帰りの渚の制服を見て、圭人はしみじみ言った。 「ねぇ、圭人くんは本当に彼女いないの?毎年こんな街に来て・・・」 「渚は高校生になって彼氏できた?渚は綺麗だからモテるだろ?」 「・・・全然モテないよ」 「それは周りが見る目ないんだな」 流石に高校生になった渚は、自分が圭人に恋焦がれることに気付く。 だから何となく恋愛の話を振るけど、いつも上手くかわされてしまっていた。 しかしその年はいつもと少し違った。 「圭人、遊びに来ちゃったー」 小柄で色白の女の子が、圭人を訪ねて来た。 「ちょ、来るなって行っただろ?」 「だって・・・夏の間会えないなんて、辛すぎるよ」 その様子を見てすぐに、圭人の恋人だということが分かった。 渚とは正反対の白い肌に、黒くてツヤツヤした髪。とても女の子らしい人だった。 圭人は何とか彼女を説得して、その日のうちに東京に帰したみたいだったが、渚の胸には大きなシコリが残った。 その年の夏は、圭人とどう接していいのか分からなくなってしまい、彼女が突然訪れた日から、ほとんど話さずに別れてしまった。
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