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父の葬式の日は、澄み切った青空が広がる、とても天気のいい日だった。青空へ旅立つのが、何とも父らしいと渚も湊も思った。
午前中に父を天国へ見送り、午後から葬式が行われた。
生前、男手ひとつで店をやりながら二人を育てた父は、街の人からとても人気者だった。お葬式には街中の人が顔を出した。
次々とお焼香をしていく弔問客に、渚と湊は深々と頭を下げていく。
「渚、渚、あれ!」
「え?」
渚がロボットのように何も考えずにお辞儀を繰り返していると、隣に座っていた湊に小声で呼ばれる。
そんな湊に促されるまま、弔問客の列を見ると、そこには十年ぶりに見る懐かしい顔があった。
「圭人くん・・・」
「あいつ、老けたな」
湊は渚の耳元でそれだけ言うと、ロボットのようなお辞儀に戻っていく。
渚は久々に見る圭人に何も考えることが出来ずに、下を向いたまま動きが止まってしまった。
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