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ある建物図書室にいた。「図書館」ではない。「図書室」だ。 「アルゴリズム」「C言語」「java」などと書かれた薄いものから厚い背表紙まで色々な厚さの神をぼんやりと目で追っていく。しかし手に取ることはない。取りたいとも今は思わない。何故なら本を手に取り開いても全く理解できないとわかっているから。 背表紙をみながら浮ぶのはかつて挫折した苦い思い出。にもかかわらず未練がましく背表紙を目で追うのは何故であろう。 上段から一つづつ背表紙だけを読み終えた後、私はその場を離れ一番突き当たりの書棚へとやってきた。 書棚には4,50年前の装丁と思われる分厚いしっかりした背表紙の「○○全集」なる過去の文豪の作品がずらりと並んでいる。今さっき見た薄いツルツルした背表紙とは大違いだ。それらの重厚感溢れる背表紙を再び上から順々に眺めていく。今度は時々手に取りその重さを確かめたり、時には目次や数行読んだりして本を閉じる事を繰り返す。
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