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埃っぽい小さな薄暗い図書室で、寒さに震えながら一冊の全集を手に取り椅子に座る。読書用の椅子とテーブルはぎちぎちに配置された本棚の通路とは違い、天井からは読書等が程よい明るさのままでぶら下がる。私は年季の入ったテーブルの上に本を置くと早速読み始めた。
その図書室は誰でも使えるわけではない。私も期間限定とはいえ縁あって出入りを許された身。
しかしここは不思議な空間だ。本の文字を目で追いながら、頭の片隅は過去の回想へと旅立っていく。甦る記憶。それは何十年と探し求めていた過去の場所にそっくりだった。
図書室に入室出来るのは今日だけかもしれない。
または仮に明日入室できたとしても、ここはとても騒がしい場所になるかもしれない。
だから思う。今日、感じたこの事をここに残しておこう。
小さな街外れにある建物の一角。私はそこで一瞬だけ、自分の居場所を見つけた気がした。
そう、長い人生で一瞬だけ。
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