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アサドはそこにいた兵士達を集めた。
「中将殿が現地入りするまでカーディル大佐がまた指揮を取る。次の指示が出るまで各自ここで待機、今のうちに身体を休めておけ!」
「はい!」
振り返ることなくテントを後にしたアサドをカーディルは黙って見送る。
「だからお前も同じ“死にたがりな奴だ”っつってんだ……たく」
カーディルはぼそりと呟いた。
緊迫した状況に追い込まれる度に危険な役目を買って出るアサドを毎回止めることが出来ない。
手にしていた煙草がじわりと燃え続け、長く伸びた灰がポトリと胡座をかいていたカーディルの膝に落ちる。
今度こそ国王には役立たずと罵られて首を跳ねられるか……。そんな事を考えつつもカーディルは何故か突然ハハッと大声で笑っていた──。
「軽く偵察したら戻ってくる」
「はい!」
アサドは輸送機を操縦してきた部下から装備のヘルメットを受けとり装着する。
「10時の方向に三軒の民家があります。それを越えたら敵陣に入ってしまうので注意して下さい!」
アサドはメットに付いていたマスクを着けると部下の言葉に頷いた。
飛行機に乗り込みスモークの掛かった黒いバイザーで目元を覆う。
アサドは敬礼して送り出す部下に同じ挨拶を返す。
そして前を見据え高く飛び立って行った──。
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