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「……っ…お前達はどこの国の者だっ…」
額に掛かった唾がゆっくりとイザークの頬を伝っていく──
震えながらも大きな声で口にしたイザークをキヤーナは思わず笑う。
「どこの国?……この言葉を聞いて何処だかわかるか──」
「──…っ…」
キヤーナが口にした言葉はアラブ語でも確かにこの国独特の訛りが混ざっていた。
「反政府軍かっ!?…」
驚きを隠せずにイザークは顔を上げてキヤーナを見た。
反政府軍なら素人の寄せ集めだ。だが侵入してきたこの者達は実に手際がよかった。
明らかによその国で特別な訓練を受けた部隊であり、我が軍の兵にもそんな隊は一つもない。
色んな疑いを含み震える眼差しをキヤーナは静かに見つめ返す。
まだ何も知らない頃──
国のためだとそれだけを言い聞かされ、銃を握らされた。
敵を一人撃つ度に褒美に食べ物を分け与えられ、そして褒められた。
何も知らぬまま、銃を撃つことで生きて行けるのだと学んでしまった。
小さな国は反政府軍と政府の軍によって、勝手に東西に分断されキヤーナは敵の拠点地にただ住んでいただけの従兄を銃で撃ったのだ。
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