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敵国の首相を捕虜とした今、戦場はとても静かになっていた。
アサドの乗った輸送機が撃墜されて、日付けが変わろうとしている。
司令本部でターミルはザイードと視線を交わし、互いに頷き合う。
「後はザイード様、頼みますぞ」
「ああ、わかってる」
厳しいながら引き締まった表情でザイードは返した。
「お気を付けて」
短い言葉を掛けるアレフにザイードもただ無言で頷く。
「準備が整いました!」
「ああ、直ぐに発とう」
呼びに来た兵士を引き連れて、白装束を身に纏ったザイードは本部を後にする。
大きく一歩を踏みしめながら進む足取り。
それは、急ぎながらも平静を保つための自身への戒めでもあった──。
──こちら上空。7時の方角の湿原で機体の一部を確認!──
──了解!直ぐに部隊を送る。位置情報を送ってくれ!──
夜の空を三機の偵察機が飛び交う。
隠れている獲物を捜しているのか、その中の一機は同じ位置を何度も大きく旋回していた。
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