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もうすぐ夜が明ける──
それを証拠に木々の隙間から朝焼けの目映い光が射し込んでくる──
アサドは首を仰ぎ目を閉じた。
敵に見つかるか
それとも神はまだ俺の運を試すのか──
「……まあいい…あいつらが助かったならもう十分だ……ザイードが……あとを継ぐならもう十分……」
マナミも……
「ふ……」
アサドは瞼を閉じたまま、小さく笑みを溢す。
「生きることを諦めるか?この俺が──…」
呟きながら疲れた身体を横にした。
朝陽の木漏れ日が真上から射し込み眩しさに眉を潜める。
色んな戦地に赴き倒れていく兵士達に散々喚き散らした。
“諦めるな──っ…”
そう叫んだ自分がこんなに簡単に諦めるのか──
薄目を開けて眩しいながらもアサドはキラキラと反射する陽の光を見つめる。
「……っ?…」
一人考えながら、アサドは何かの気配に頭をもたげた。
足元で何かが蠢いている。
ふぐふぐと潰れた鼻を鳴らし黒い小さな獣が周りを嗅ぎ回っている。
“豚を食べたことがあるか?──”
「………」
こんな時に思い出したくもない言葉をアサドは思い出していた──
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