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「おいっ、そっちはどうだ!?」
「鉄の残骸しか見当たらん!もう少し奥まで行ってみるっ」
湿った地面を覆っている枯れた草木が踏みつけられて、パキパキと音を立てていた。
背中に銃を背負い、手にした大振りのナイフで行く手を阻む蔓を叩き切る。
戦闘服に身を包んだ男達は湿原の奥を目指して進んでいた──。
墜落した輸送機の燃えた残骸を至るところで目にする。
引火するのが遅かったせいか空中分解することなく墜落してから爆発したようだ。
これ以上、火が燃え広がることがないように、上空からは今も燻る箇所に水が撒かれていた。
「この有り様じゃあ無理だろうな…」
周りを見回しそうポツリと呟く。
せめて何か小さな遺品でも持ち帰らなければ。
諦めながらもそんな思いで湿原の林の中を歩き回っていた。
撃たれてもなお、生還した強運の持ち主だった。だが、さすがにこの状態で生きていれば奇跡だ。
「俺…少将殿に飲みに連れて行ってもらう約束してたんだ…」
二人組で捜索に当たっていた若い兵士はふっと笑いながら思わずそう溢した。
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