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「少将っ!」
「あまり大声を出すな…敵に見つかるかも知れん」
アサドは笑いながらそう返す。
「敵は居ません!停戦を呼び掛けて今ここに居るのは我々の軍だけですっ…」
「停戦……」
アサドはその言葉を呟いた。一人の兵士がアサドの無事を周りの兵士に知らせている。
呼び掛けに集まってきたアサドの部下達は手足のしっかり揃ったアサドを見つけ、逆に驚いていた。
だが、体内が負傷していないとは限らない。
安静な体位を保ち、部下はアサドを休ませる。
裸足であった左の足首辺りからは酷い出血をした痕があった。膝を自分できつく縛り止血したお陰か血は止まっている。
救護班である兵士は包帯をその箇所に巻くと縛られていた膝の布を緩めていた。
「切るしかないだろうな…」
包帯を巻き終え、変色仕掛けた足を見つめる部下にアサドは笑いながらそう口にする。
「医者にしっかり診てもらってからです」
今は何も言えないと部下は肩を竦める。そして足元に転がる肉の固まりに気付いた。
「食べたんですか……」
驚いたように目を見開く──
アサドは思わず吹き出して無傷だった方の膝を叩いて笑った。
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